~ 集まれ、科学者を夢見る若者たち!~

 名古屋大学 大学院理学研究科・素粒子宇宙物理学専攻は、素粒子物理学と宇宙物理学の両分野における世界の研究の発展に寄与し、ノーベル賞受賞者をはじめ、多くの人材育成に関わってきました。坂田・早川記念レクチャーは、坂田昌一・早川幸男両教授の業績をたたえつつ、21世紀を担う研究者の発掘および育成を目的として設けられました。

~湯川理論誕生80年・坂田模型誕生60年~

    第13回となる今回は、日本を代表する原子核・ ハドロン理論物理学者である矢崎紘一先生をお招きします。 今年は原子核を作っている力核力の謎をパイ中間子によって解いた湯川理論誕生80年であり、 パイ中間子やその仲間のK中間子が複合粒子であることを提唱し今日のクォーク模型への道を拓いた坂田模型誕生60年(a)でもある、 記念すべき年です。 そこで今年の坂田・早川レクチャーでは、坂田先生ゆかり(b)のこの原子核の成り立ちの解明のドラマから今日のクォーク理論の最先端格子ゲージ理論までを、この分野の第一人者の矢崎先生から分かりやすく解説していただきます。

(a)論文出版は1956年ですが、学会発表は1955年。
(b)坂田先生は湯川先生の最初のお弟子さんで中間子論の論文 "On the Interaction of Elementary Particles. I, II, III, IV"の第2、3、4論文の共著者です。 (第1論文:H.Yukawa, 1935、第2論文:H.Yukawa and S. Sakata, 1937、 第3論文:H.Yukawa, S. Sakata and M.Taketani, 1938、第4論文:H.Yukawa, S. Sakata, M. Kobayasi and M. Taketani, 1938)

    さらに、坂田先生は湯川理論のお手伝いをしただけではありません。 湯川理論のパイ中間子では当時宇宙線で発見された新しい粒子を説明すること ができませんでした。その中1946年(c)に発表した坂田ー井上の「2中間子論」はこの新しい粒子はパイ中間子ではなく、それが崩壊してできた別種の新粒子「ミュー中間子」(d)であるという理論を提唱し、 湯川理論の困難を救いました。 実際予言された通り1947年、パイ中間子は「ミュー中間子」への崩壊を通じて パウエルによって発見されました。 これにより核力の理論としての湯川理論の正しさが立証されると同時に 新しい粒子「ミュー中間子」の存在が確立しました。 そして湯川先生が1949年、翌年1950年にパウエルがノーベル賞を受賞。 このとき坂田先生もパウエルとともにノーベル賞を受賞してもおかしくありませんでした。
(c)この論文は実は1943年に発表されていましたが、戦中につき 発表できず戦後1946年にやっとProgress of Theoretical Physics に発表されました。
(d)現在ではミューオンと呼ばれています。電子と同じ仲間で中間子では ありません。

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第13回坂田・早川記念レクチャーは盛況のうちに終了いたしました。
たくさんの方のご参加誠にありがとうございました。
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